陶器業界の衰退から危機を察知!

2019/02/08

多治見市は美濃焼で有名な陶器の町です。古墳時代から「焼き物」の文化がある土地であり、多くの陶芸家や職人たちが1300年の伝統を現代に受け継いで、手作業で陶器を作り続けてきました。また美濃焼の技術を活かしたモザイクタイルも全国一位の生産量を誇り、タイル産業も地域の発展に大きく貢献してきました。

 ところが現在は、名の知れた陶芸家以外は収入が激減し、地元の陶器会社はすっかり衰退してしまいました。安価な輸入品が、大量に市場に出回るようになったためです。生き残っているのはセラミックなどの特殊な陶器で差別化に成功した会社のみです。同じ理由で、以前は何百社とあったタイル会社も、現在は数十社しかありません。

 陶器やタイルの業界自体は一定の利益を出していますが、それは海外に輸出している一部の大企業によるものです。売上をあげるために資金を工面して設備投資をしても、世相の移り変わるスピードのほうが早く、あっという間に回収できない状態になって赤字に転落してしまう中小企業が後を絶ちません。

 協和義肢製作所の稲垣穂積社長は、そのような陶器業界、タイル業界の様子を見て「間もなく義肢装具業界にも同じ事が起こる」と、かなり早い段階から強い危機感を抱いていました。

 事実、補装具は既製品が多く使われるようになってきました。安価な量産品であっても、ある程度はサイズを調整できるため、軽度の患者さんのニーズは十分満たせる機能を有しているのです。

 重度患者用の補装具は、現時点ではオーダーメイドでなければ対応できません。しかし情報化が急速に進展する中、ビッグデータの活用によりエビデンスが成立し、デジタル技術の高度化が進めば、今よりも多くの義肢や装具がデジタル機器によって量産できるようになるでしょう。

「アナログ技術の必要性がゼロになることは決してないけれど、世の中のデジタル化は確実に進んでいて、昔のようにすべて手作業でやる時代ではない」

「本格的なデジタル化が義肢装具業界に到来したとき、デジタル技術を持たない製作所は淘汰される」

「患者さんに合うものを作るために自社の技術を成長させ続けるのは当然であるし、そのための投資は必要だ」

 そう考え、社長は業務のデジタル化に着手したのです。