まずは、大手スポーツメーカーのシューズ部門が行っていたオーダーメイドインソールシステムを導入しました。現場で足の形を測定し、そのデータを製作所に持ち帰って切削機でインソールを削り出して、顧客のもとに届けるという方法です。
機械はアメリカの企業が製造したもので、すべてを手作業でやるよりは早く作れたそうです。しかし当時の3Dスキャナーは、まだ細部の形まで緻密に捉えることができませんでした。切削機の削り出しスピードも遅く、想定していた製造数を実現する能力はありませんでした。
確かな手応えを感じられないまま、そのスポーツメーカーはオーダーメイドインソール事業をやめてしまいました。その後6年間は、ドイツやスイスのメーカーが提供するシステムを使っていました。いずれも高性能ではありましたが、使用できる材料が限られていたり、切削機が故障したときの対応が遅かったりと、さまざまな問題が発生しました。そしてその海外メーカーも、日本から撤退してしまいました。
「デジタル化は、もう諦めるべきだろうか」
そう悩んでいたとき、DGPと出会ったのだそうです。
当時、DGPのオーダーメイドインソール機器はまだ改良途中でした。そのため協力してくれそうな会社にアタックしても、相手側のメリットが少ないため、なかなか承諾を貰えずにいました。
しかし、デジタル化の必要性を強く感じながらも、海外メーカーに頼ると一方的に撤退されるリスクを回避できないと知った稲垣社長は、
「今できなくても、数年後にはできるようになっているという展望があるなら、価値がある」
「義肢装具業界のデジタル化を、メイドインジャパンで一緒に広げていきましょう」
と、言ってくださったのです。
それから4年間、協和義肢製作所でDGPのシステムを実際に使用していただき、足りない機能や改良してほしい部分など、あらゆる要望を現場から出してもらいました。DGPはそれに応えて機器の改良を重ね、デジタル時代にふさわしい義肢装具業界の新たな環境づくりを進めてきたのです。