「靴屋は今後、既製品の靴を売る商売ではなく、靴を履くことで得られる人生の幸せや快適さを提供するサービス業になるはずです」
中山社長は、そう言います。
同時に、デジタル化がさらに進んだとき、靴業界がどのようになるのかは、中山社長にも予想がつかないそうです。
足は人間の体の中でもとくにサイズが変わりやすい、厄介な部分です。立っているとき、座っているとき、足を地面に付けていないときで形が変わりますし、体重によっても変化します。
そのため足にぴったり合う靴を作るといっても、どの状態の足を基準にするのかは、相手のライフスタイルやニーズに応じて職人が個々に判断しているため、決まったルールはありません。
また、革素材の靴は履いているうちに伸びてしまいますし、湿度や温度によっても微妙に変化します。
厳密に言えば、足も靴も、その日その時間によって、どんどんサイズが変動しているのです。
オーダーメイド靴の全工程をデジタル化させるには、どの状態の足で測定するのか、基準やルールが必要になります。靴の素材も、理論上は決して変化しないものでなければいけません。
そうした基準を定めたり、変化を最小限に抑えた素材が開発されたりするには、まだ時間がかかるかもしれません。しかしその日が来ないという保証はどこにもありません。その基準が発見されれば、靴業界は大きく動くでしょう。
その流れに飲み込まれないためには「靴を売る」というフィールドにとどまっていてはいけません。靴業界の中で新しい産業を興す──中山社長が言う「靴で人を幸せにするサービス」へ、シフトしていかなければならないのです。
中山靴店はこの産業を広めるために、靴職人の教育と、複数店舗の経営管理に力を注いでいます。靴職人の学校設立や、ヨーロッパ進出によるブランディング戦略をめざして準備を進めつつ、すでにアメーバ経営を取り入れた経営管理の改善と組織づく
りを行っています。
自社で10年以上かけて構築したノウハウを社会に出し、さらに新しい経営モデルを作り、業界を牽引していく。
チャレンジャーでありイノベーターである中山社長の活動を、DGPは今後も全力でバックアップしたいと考えています。