義肢装具士のデジタル化への期待!

2019/02/08

①医療連携

 それでは義肢装具士がもつ情報をデジタル化した場合、医療現場との連携において、どのようなメリットがあるのでしょうか。

 たとえば体の一部を切断した患者さんの義肢を製作するときは、断端の採型を行います。3Dスキャナーで測定すればそのまま三次元データとして保存できますし、石膏で採型した場合でも、その内側をハンディスキャナーで測定すれば電子データ化できます。

 義肢は数年ごとに作り替えますから、そのつどデジタル機器で採型し、そのデータと処方情報を蓄積していけば、断端の変化と処方の変化を時系列で確認できるようになります。

 つまり、

「患者さんの断端の状態が、どのように変化していったか」

「断端にどのような変化があったとき、処方がどのように変わったか」

 といった情報が、目で見て分かるようになるのです。

 それらのデータを医師の電子カルテに紐付けることができれば、病院との情報共有が可能になります。それは治療を行っている医師や、リハビリを担う理学療法士には有益な情報であり、他の医療職との接触機会が少ない義肢装具士にとって、貴重なコミュニケーションのキッカケになるはずです。

 また義肢装具士自身も患者さんに説明をするとき、3Dデータを見せながら「以前は○○になっていましたが、今は□□に変わったので......このような工夫をします」と、説明しやすくなります。

 その他にもさまざまなメリットがありますが、ここでは、

・デジタル化により、病院では医療専門職の連携が深まっている。

・義肢装具士もデジタル化することで、その連携の一部に入り込むことができる。

 この2点を覚えておいてください。

 

②業務の効率化と処方数の増加

 次に、義肢装具士がデジタル化した場合の業務上のメリットについて、説明します。

 営業先の病院に行くときのことを、思い出してください。

 朝、たくさんの道具を車に詰め込んで病院に向かい、駐車場に車を停めて道具を運び込み、準備を整えたあとは、医師に呼ばれるまで待機。

 医師に呼ばれたら患者さんの状態を聞き取り、採寸・採型。それが終われば、次の患者さんが来るまで待機。これを繰り返し、診療時間が終わったら次の病院に行くか、製作所に戻って必要な書類を作成して、ようやく製作開始。

 その日に何人の患者さんが来るのか、どれだけ仕事ができるのかは、事前に分かりません。そのため、何人もの患者さんの採型をして大忙しな日があれば、わずか2〜3人の採型のみで終わり、長い待ち時間を持て余す日もあります。

 仕方が無いこととはいえ、あまりにも非効率なやり方です。

 そこで、デジタル機器が役に立ちます。

 一人の患者さんの採型が終わり、次の仕事が発生するまでに間が空いたときは、ノートパソコンやiPad等があれば、採寸・採型したデータをもとにCADを用いた設計作業ができます。完成した設計データを製作所に送信すれば、現場にいる他の義肢装具士に作り始めてもらうことができるため、納期の短縮にもつながります。それは、読書しながら来るかどうかわからない患者を漫然と待つよりも、はるかに有意義な時間の使い方といえるでしょう。

 また、そのノートパソコンやiPadに、これまでの実績データが入っていれば、医師との打ち合わせの際に、

「以前、Aさんの義足にこのパーツを使ったところ、とても動きやすくて助かった、リハビリにも積極的になれたと喜んでもらえました。この患者さんにも合うと思いますが、いかがですか?」

 と、患者さんにより良い義肢装具を提供するための提案ができます。自分が担当した患者さんの処方だけではなく、製作所全体で実績データを共有し、各端末から閲覧できるようにしておけば、提案の幅も広がるでしょう。

 提案が採用され、治療に有効な効果が現れれば、医師からの信頼が高まります。「このケースにはこの処方が効く」と医師が認識すれば、該当ケースの患者さんが来たときに同じ処方を出してくれるようになり、受注数の増加につながるかもしれません。