情報社会が医療連携を変える!

2019/02/08

医療情報はひとつの病院内で共有するだけでも大きなメリットがありますが、厚生労働省はさらに、国内の全患者のカルテをデジタル化して収集し、全国の医療機関および医療関係者がデータを共有・活用できる巨大システムの構築を目指しています。

 このシステムが実現すればますます医療の効率化が進み、患者側にも大きなメリットが生まれます。

 たとえば持病があり、定期的な通院が必要な患者さんが何らかの理由で引っ越しをしたときは、早めに転居先で評判がいい医院を探し出して、かかりつけ医を決めなければいけません。そして初診のとき(病気や病状によっては、前の医師が紹介状や診断書を書いてくれるかもしれませんが)医師に自分の病状を理解してもらうため、これまでの治療の経緯などを詳しく説明しなければなりません。

 医師にとって、それらは患者さんの記憶に基づいているため、必ずしも正確な情報とはいえません。そこで、

「じゃあ、いちおう検査をしておきましょう」

「念のため、この薬から始めましょう」

 と、本来は必要ない検査をしたり、最適な治療にたどり着くまでいくつかの段階を踏むことになります。

 しかし全国規模で患者カルテの共有化が実現すれば、医師は初めて診る患者であっても、それまでの治療経過をパソコンで閲覧したうえで治療を始めることができます。患者さんも、どの病院に行っても自分の診療情報が引き継がれているため、安心して治療を受けられるようになります。

 また「うちでは対応できないので、専門科がある病院で診てもらってください」と、地域の診療所から専門性の高い医療機関に転院するとき、現在は主治医がプリントアウトしたレントゲン写真や検査結果などの書類一式を紹介状とともに患者さんに渡し、患者さんはそれを持参して紹介先に行かなければなりません。しかしカルテの全国共有化が実現すれば、医師の手を煩わせることなく、患者さん自身も書類の管理や持参の必要がなく、転院先の医療機関が治療に必要なすべてのデータを自ら入手してくれるのです。

 入院患者が退院して在宅治療に切り替わる場合も同じです。患者さんは地元の診療所の医師に、入院中に受けた治療について説明する必要がなくなります。医師はカルテの情報をもとに在宅治療の方針をたて、訪問看護師や薬剤師、ケアマネージャーや介護士などもその情報を共有することで、スムーズなチーム医療が行われるでしょう。

 患者はどこの医療機関にかかっても、自分の診療情報が引き継がれる。医師はどのような患者が来ても、一度でも医療機関にかかったことがあれば、その情報を知ることができる。そのような環境が構築されれば、間違いなく医療体制は大きな変化を遂げるでしょう。