第4次産業革命が始まっている!

2019/02/08

いま、世界はこれまでにないスピードで変化しています。その原因は「第4次産業革命」です。

 第4次産業革命とは何か、人類の歴史を簡単に振り返りながら、ご説明します。

 世界の産業はこれまで、3回の産業革命によって進化してきました。

 第1次産業革命は、19世紀にイギリスで起こりました。蒸気機関の発明によってイギリスでは紡績業を中心にさまざまな産業分野で家内制手工業から工場制機械工業への移行が起こり「世界の工場」と呼ばれるほどに発展しました。

 やがて20世紀になるとアメリカで電気技術の発達と活用が進み、機械による大量生産を可能とする第2次産業革命が起こりました。製造業の供給力が向上し、自動車や電気機器の価格が下がり、一般家庭に広まったのもこの頃です。大量生産・大量消費時代の幕開けです。

 第3次産業革命は、20世紀中盤から後半にかけて起こった電子産業の発展がキッカケです。プログラム技術が日進月歩で高度化し、産業用ロボットが発達し、まるで人間の手のような複雑な動きが可能になりました。そのため製造工場ではより多くの工程をロボットが代替できるようになり、コンピュータ制御による機械生産の自動化が進みました。

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 ここまでの流れで抑えておきたいのは、職人による手工業で行っていた「製造」が第1次産業革命以降、工場における「人力+機械」のスタイルとなり、次第に機械が担う割合が増えていったということです。

 その最先端にあるのが、ドイツの高級車、メルセデス・ベンツの製造工場です。

 いま、ベンツの製造工場に、何人の従業員がいると思いますか?

 答えは、ゼロです。

 人間の従業員は一人もいません。約7000台のロボットが、ベンツという高級車を製造する全工程を担っているのです。

 そう遠くない未来に、自動車業界では製造の全自動化が進むでしょう。製造業に限らず、広い産業分野において、人間が体を動かして労働をしなくても商品が自動的に製造・供給される時代がやってくると思われます。

 第3次産業革命はさらに、3つの大きな変化を生み出しました。

 第一に「インターネット」によるデジタル通信です。ネットワークに接続可能な端末を持ったユーザは、インターネット上にある膨大な情報をいつでも・どこでも手に入れられるようになり、同時に個人・団体問わず自由に情報を発信できるようになりました。またインターネットを媒体としたコミュニケーションツールやショッピングサービスが次々登場し、瞬く間に普及して、すでに人々の生活とは切り離せないほど根付いています。

 第二に、インターネットインフラを活用し、ユーザのさまざまな情報を収集して活用する「ビッグデータ」。第三に、プログラムのようにあらかじめ設定したコマンドを実行するばかりではなく、自分で考え、進化していくAI(人工知能)です。

 この3つが急速に進化しつつある現在、さまざまな情報がインターネットを介して繋がり、それらの情報はビッグデータとして蓄積され、ビッグデータの情報はAIによって最適化・フィードバックされるようになりました。

 これが、第4次産業革命の始まりです。

 ドイツが2011年に発表した「インダストリー4・0」をご存じでしょうか。ドイツ政府が主導して行っている産官学共同プロジェクトであり「スマートファクトリー(考える工場)」の実現を目指す取り組みです。

 ドイツは欧州最大のものづくり国家ですが、人件費が安い中国をはじめとするアジアの安価な商品が大量に市場に流れ込み、国内の製造業が危機に陥っています。

 そこで、各工場で1つの製品を大量に生産する「ライン生産」を見直し、各地の工場の設備やシステムを標準化して、生産に関わる情報をリアルタイムで共有することにより、大規模なフィールドで少量多品種、高付加価値の製品を生産する「ダイナミックセル生産」のシステムづくりに着手したのです。

 生産情報を共有しているため、たとえばある消費者から「A商品を○月×日までに購入したい」という注文が入れば、AIが各工場の在庫状況と生産スケジュールを確認・調整して、顧客の要望に合う製造を実現する最適プランを組み、各工場に命令を発信。メルセデス・ベンツの工場のように全自動化された工場であれば、受注から製造、納品まですべて自動で行えるようになります。

 このように第4次産業革命が実現すれば、製造業における労働とは「工場で作業をする」ではなく「工場のシステムを管理する」ことを指すようになります。その管理もAIが制御できるようになれば「製造業に従事する」という概念自体が大きく変わるでしょう。