これまで義肢装具士は「病院の中にいない」ため、他の医療職との接触機会が限られていました。週に1〜2回程度しか会うことができず「頼りたいときに頼れない専門家」であるため、チームメンバーとして認識されないのは、当然のことといえます。
しかしインターネットを使ったネットワークで繋がっていれば、距離は関係ありません。いつでもどこからでも、任意のメンバーに連絡をとり、情報を共有することができます。
未来のチーム医療のあり方がどのように変化するかは不明ですが、情報の共有と活用、多業種連携の動きは今後も進み、ICT(情報伝達技術)の進化がそれを助けると思われます。それは、これまで「チーム外」で活動するしかなかった義肢装具士が「チーム内」に飛び込むことができる最大のチャンスなのです。
ネットワークの環境を整え、日常的にコミュニケーションをとり、積極的に情報提供を行っておけば、チームの一員として認められるようになるでしょう。すると、病院内で困ったことや相談したいことが発生したときに、病院側からも積極的に連絡をもらえるようになるはずです。
たとえばリハビリ科に歩行能力の衰えた高齢の患者さんが来た場合、履いている靴が既製靴では、本人の足にぴったり適合しません。介護シューズであっても、履きやすさ、軽さなどは工夫されていますが、オーダーメイドの靴のほうがリハビリの効果が高くなると考えられるため、義肢装具士に相談が入るかもしれません。
また、義肢装具士がリハビリの現場に入るようになれば、患者さんがどのような状態でリハビリに取り組み、義肢や装具が患者さんのパフォーマンスをどれほど引き出せているのか、自分の設計が正しかったどうかを評価できます。必要があればその場で調整することも可能であり、リハビリの効果アップに寄与できます。
さらに、チーム医療が行われているのは病院内だけではありません。在宅の患者さんの装具に軽微な不具合が生じたり、義肢の調子がいまいち良くないという微妙なケースが発生したとき、通常は「大したことじゃないだろう」「もうしばらく様子を見よう」と、本人も、日常的にサポートに入っているホームヘルパーや訪問看護師なども、わざわざ義肢装具士に連絡をしません。
しかし、患者さんのその日の状態を記した日報のようなものをデジタル化して共有していれば、義肢装具士はそれを見て、メンテナンスが必要かどうかを判断できます。
デジタル化するということは、データを共有している輪の中に入るということであり、他の医療職や介護職、関係機関、患者さん本人との接触回数が増えるということでもあります。そうなれば、今まで知らなかった情報が得られ、新しい課題やニーズを発見し、義肢装具士としてやるべきことが見えてくるため、どんどん活躍の場が広がっていくに違いありません。