海外では自分の足を3Dスキャナーでデジタルデータ化した後、インターネットで自分の足に合う靴を検索して、気に入ったものがあれば購入して取り寄せるというサービスがすでに始まっています。
日本ではまだ、自分の足を3Dスキャナーで計測したことがある人はごく少数ですし、このようなサービスは普及していません。
しかし、ゴルフクラブやギター、腕時計や革小物など、靴以外のさまざまなアイテムは、カスタムオーダーメイドによる販売が行われています。Web上でパーツや色、素材などを選択し、注文ボタンを押せば、数日後に商品が届く仕組みです。
それらは量産品よりも高めの価格設定になっていますが、自分が本当に欲しいもの、自分のニーズに適合するものに対価を支払う価値観が広がってきている証拠でしょう。
協和義肢製作所の稲垣社長がおっしゃっていたように、健全な育成や、スポーツ障害を防止するオーダーメイドインソール、オーダーメイド靴の価値を社会が認めたときには、IT技術を活用し、それらが効率良く手に入る仕組みも構築されるでしょう。DGPが開発を進めている「FOOTBANK」のようなサービスが増えれば、それはデジタル化を進めた義肢装具士にとって、ひじょうに大きなチャンスです。
これまでは営業に行ける範囲内の、近隣の病院の患者さんが対象でしたが、デジタルデータとインターネットを使うなら、日本国内はもちろん、世界中の人々が顧客になります。
さらにオーダーメイド商品は、品質が高ければ顧客がリピーターになりやすいという特徴があります。足のデータと3D切削機または3Dプリンターがあれば、Web注文が入り次第すぐに製作に取りかかり、全く同じ商品を短期間で納品できるのです。
また、義肢装具士として足の形状を観察・分析し、問題を発見した場合は、解決に向けた的確な提案もできます。この『プラスα』の提案が『差別化』となり、人気が集まるかもしれません。
義肢装具士にとってデジタル化とは、製作の効率化をもたらすものであり、データ活用で仕事の質を向上させたり、新たな問題やニーズの発見から新しい事業のヒントを獲得するためのものです。
そして、デジタル化した社会に義肢装具士自身が『適合』し、社会の中でしっかり役割を果たしてくための手段なのです。